昨年十月に兄弟子菊輔が脳幹梗塞で倒れました。その半年ほど前に共通の友人が同じ脳幹梗塞で倒れで亡くなり、あんなに元気だったのにと話していた矢先のことでした。お医者様からは手の施しようがない奇跡を祈るばかりと言われた状態で、実は一門みんな覚悟しました。もうすぐ師匠の一周忌というときだったので、まさか!師匠がさびしがって呼んでいるのではないか?…だとしたら「やめて下さい!」と祈りました。ところがなんと、兄さんの生命力がその奇跡を起こしました。一時心肺停止にまでなったというのに、みるみる回復し、ただ今復帰に向け麻痺が残った左手のリハビリ特訓中です。
菊輔兄さんとは毎年「手話落語の会」を開催する仲。兄さんは私とは違い、師匠からの命令ではなく自主的におかみさんと一緒にサークルに通い勉強した努力家です。せっかくなのでお願いして池袋の会のメンバーになっていただいて今年で十年目になります。倒れて意識が朦朧とした中、また回復段階でも兄さんが無意識に使ったのが手話だったそうで、またお見舞いに手話仲間の方々がいらしては手話で話したのでそれが脳の刺激にもなったのではということ。滑舌も確かに「なんだか待合所みたいなところに師匠がいて『お前こんなところで何やってんだ帰れ帰れ』って言われたんだよ」と話してくれました。「左手が麻痺していいるからなー」と言いながらも、三月三十一日の兄さんとは十回目の「手話と一緒に楽しむ落語の会」の出演は承諾してくれました。師匠円菊も寝たきりになってあまり話ができなくなってから私が行くと手話で話してくれていました、わかってくれる人さえいればこんなに便利なものは無いのです。
手を動かすことによって右脳左脳への刺激にもなります。私は海外に行ってパニックになった時はいつの間にか手話が出ています。手話は世界共通ではありませんが、感情を込めて表情もつければある程度通じることも有ります。最近ストレスで急性難聴になる人が増えているとか、いつ何時困ることが起きるかもしれません。なのに看護師さんたちが手話を知らないと兄さんが嘆いていました。「手話は他人のためならず」是非皆さんも手話を覚えましょう!