五百羅漢の魅力

今から二十四年前、真打昇進が決まって東海道五十三次を修業旅したときに静岡県清水市興津の清見寺にある五百羅漢さんたちの前で落語「お見立て」を披露しました。正確に言うとその企画の中でプロデューサーにやらされたのですが、雨上がりの地面に紙を敷いて作務衣姿で五百羅漢さんに向かって噺をしたのです。

笑っていたり怒っていたりとぼけていたりそれぞれのお顔が、その修業旅でグサグサになっていた私の心にしみこみました。三年前、久しぶりに清見寺に行くことができ、羅漢さんたちにご挨拶、とても懐かしかったです。色々な方々の気持ちがこもったそれぞれの羅漢さんのお顔は実に味があります。
二十年前に「旅」という雑誌の取材で谷中の浄名院というお寺の二万体ほどのお地蔵さんも見ましたが圧巻でした。各地にある五百羅漢巡りを菊千代のこれからの噺家人生の味付けにしたいと思います。

先日は富山市五艘にある長慶寺と盛岡の報恩寺に行くことができました。どちらも、かなり遠かったり、歩いてめげそうになりましたが、特に報恩寺さんは羅漢堂の中に設置されて、味わい深く素晴らしかったです。