おかげさまで、弟子のちよりんが十五年の修業を経て、目出度く駒子と名を改めまして真打に昇進、披露興行を無事終了いたしました。
各寄席にお越しいただき、お祝いの気持ちやお言葉をいただきましたお客様に深く感謝申し上げます。弟子のこととはいえ、こんなにも大変なものかと私もつくづく思いました。二十五年前に自分も経験したはずですが、時代や状況、また先輩方の顔ぶれも変わり、楽屋の番頭さんたちに色々作法を教えてもらいながら、師弟二人してしくじらないようにただただ気を遣うばかりでした。
師弟関係というのは親子関係ではないのですが、世間の方々からは親と同じと理解されているので、子を案じる親という脇役としてなるべく口を出さずに主役を見守ることの大変さを痛感いたしました。
ですが、今まで知らなかった弟子の一面や楽屋での人脈なども知り、感心することも多々ありました。師弟関係は一生涯続きますが、まずは駒子も一人前、私にとってはライバルになりましたので、これからは自分自身の精進を改めて心に誓い、勉強していきますので、どうぞよろしくお願いいたします。
上野鈴本演芸場と浅草演芸ホールの披露口上では、一回ずつ三遊亭歌る多師匠が落語協会理事として、口上の司会を務めてくださいました。歌る多師匠とは平成五年に二人で真打昇進のお披露目をしたときの大初日、三月二十一日に二人で並び、理事の師匠方に口上をのべていただきました。
その時以来初めて、しかも今回は駒子を含めて女が三人口上に並びましたので、これは日本の歴史上初めてのことです。
ちなみに二十五年前は亡くなられた先代の小さん師匠、志ん朝師匠、志ん馬師匠、うちの師匠円菊、今回も並んでくださった馬風師匠でした。何とも感慨無量です。
馬風師匠は一九五六年に小さん門下に入門されました。つまり私の生まれた時から噺家で、菊千代・駒子師弟二代にわたって口上に並んでくださったのですからこれまた感動です。本当にありがたいことです。
上野鈴本演芸場9月28日の披露口上。左から三遊亭歌る多・柳家小さん・駒子・菊千代・鈴々舎馬風・林家正蔵